2024年6月17日に東京都内にて、Welcome Japan Summit 2024が開催されました。
Welcome Japanは、「難民も日本も、皆でたくましく」をモットーに、日本の多文化共生社会の実現を目指す政府や市民団体、教育機関、企業などの多くのセクターが集まるプラットフォームです。
6月13日には、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)によるグローバル・トレンズ・レポート2023では、故郷から避難を余儀なくされた人が12年連続で増加し、過去最多の1億2000万人を記録したとありました。
こうした未曽有の人道危機に対して、日本から、また日本だからこそ、どのような取り組みができるのか、国内外の様々なセクターからゲストを集まり、意見交換をする場として、また6月20日の「世界難民の日」にあわせて、Welcome Japan Summit 2024が開催されました。
今回、会場参加者として、Wake Up Japanの鈴木洋一が招待を受けたので、出席をしてきました。
サミットは、UNHCR駐日代表である伊藤礼樹さんのビデオメッセージによる開会挨拶にて始まりました。
続いて、基調パネルI「オーストラリアの社会全体での難民包摂の取り組みに学ぶ」では、Asia Pacific Network of RefugeesおよびGlobal Refugee-led Network創設者/代表であるオーストラリアで現在活動をするナジーバ・ウェゼファドストさん、株式会社Shared Digital Center アシスタントマネージャーであり、群馬県館林市のロヒンギャコミュニティで活動をするカディザ・べゴムさんが登壇し、モデレーターとして、元UNHCR 広報官である守屋由紀さんが務めました。
各スピーカーからは難民包摂に向けた日本やオーストラリアでの活動について紹介がなされました。オーストラリアの事例では、特に、難民の意思決定への参加について紹介がなされ、地域レベルの話し合いだけでなく、ハイレベルな機会での参加についても言及がされていました。
参加した鈴木は話を聞いた感想として、「子どもの権利をはじめ、マイノリティの社会参加についての議論にも通じる点があり、社会として参加で満足するのではなく、どのように意思決定に反映をできるような仕組みを作るのか、影響力をどう高めるのか、そうした点に着目していくことが重要だ」というコメントを寄せていました。
基調パネルII 「DXによる難民包摂の可能性」では、株式会社Recursive 共同創業者 兼 代表取締役COO 山田 勝俊さん、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 AI&D マネジャー 關山和弘さん、オーストラリアからTawasul財団 ディレクター/Evolve Humanity Initiative ジョセフ・ヨハナさんが登壇され、モデレーターとしてWelcome Japan 代表理事 金 辰泰さんが進行をされました。
AIやテクノロジーが難民の生活にどのようなインパクトを生み、例えば、各種書類のチェックなどこれまで時間がかかっていたことにも大幅な時間節約ができうる可能性などが提起されました。
また、その一方で、AIやテクノロジーだけではできないことについての言及もされました。そもそもの難民申請などの仕組みの意思決定、人々のマインドセットなどが例として挙げられました。また既存の人々の働きかけの際に「AIの(合理的な)判断」を根拠に難民受け入れの交渉を進められる可能性についても言及されました。
参加した鈴木は話を聞いた感想として、「様々な活動をするアクターが補完的に協力できる可能性があるように思われた。特にWake Up Japanのように社会教育団体がこの分野での連携や協働を考えた際に、私たちの領域から貢献も十分にできるように思われた。具体的にAIやテクノロジーが十分に対応できない事柄について把握することが重要なように思われる。また、一見関係のないように思われるアクターとの連携と協働はコレクティブ・インパクトを生むうえでも重要だと改めて考えさせられた」というコメントを寄せました。
続いて、グローバル難民フォーラム(GRF)2023のWelcome Japanが関係したPledge(宣言)の進捗共有が行われました。(宣言は各団体が難民支援のために行うことを表明したものです。)
各宣言の作成にかかわり、実践を行う団体の方々により進捗が報告されました。
多くの分野で数値的、もしくは、質的な進展についての発表がありました。
参加した鈴木は話を聞いた感想として、「Welcome Japanにかかわる宣言は把握することができ、発表をいただいた方々には感謝したい。Wake Up Japanでは、社会変革の方法や手法についての探求を行い、そのボトルネックを見出すことが社会啓発活動をするうえで大事にしているため、他の国の団体の宣言の進捗などと比較し、社会環境における課題や日本での強みなど確認できる機会をつくれたらと思った」というコメントを寄せました。
サミットは、最後に一般社団法人Welcome Japan 理事 田村 賢哉さんによる発言で終えました。
サミットには多くの企業や学術機関、市民団体などから人が集まっていました。終盤、質疑応答の際に、難民当事者と思われる方から難民当事者のサミットへの「包摂」についての問題意識が示され、Welcome Japan代表理事のキムさんが受け止め答えるという場面がありました。
一度に大きな変革を生むことは難しいこともありますが、包摂社会の実現を考える際に、「この場にいない人々」「この場に来れない人々」(特権と交差性)への想像力を高めることはとても重要だと考えましたし、Wake Up Japanとしては社会教育団体として、常にそうした視点での意思決定を目指したいと思います。